奨学生の声

情熱は育てるもの

<strong>佐藤那義</strong><br /> 留学先大学:Grinnell College (アイオワ州)<br /> 2023年卒業予定<br /> 専攻:社会学<br /> 出身高校:北嶺高校 佐藤那義
留学先大学:Grinnell College (アイオワ州)
2023年卒業予定
専攻:社会学
出身高校:北嶺高校

「情熱を見つけるためにアメリカで学んでいる」と、渡米して一学期目の報告書に書いたのをはっきりと覚えています。しかし最終学年を目前にして断言できます。情熱は「見つける」のではなく、「育てる」ものです。ある日突然、運命的な出会いをすることは極めて稀で、「面白そうだな」程度の興味を少しずつ掘り進めることで、その興味がおのずと情熱に変わっていくのだと学びました。

 

何となく履修した社会運動の授業で、高校生の時に目にしたドイツの反移民運動を思い出し、一学期かけて彼らの動機や戦略を分析しました。この授業をきっかけにナショナリズムや移民研究に興味を持ち始めました。コロナ禍で休学してからは、地元北海道で働く技能実習生(外国人労働者)や支援団体、弁護士などにインタビューを行いドキュメンタリーを作成しました。2022年の春学期からはスウェーデンに留学し、2015年に急増したシリア難民に対する地元民の反応を研究しました。学期の真っ只中にロシアによるウクライナへの侵攻が始まり、現在はストックホルムのウクライナ難民を支援するNGOでインターンをしています。小さな興味が少しずつ情熱に育っていくのを日々感じています。

渡米前はアメリカに来ればいろいろなチャンスがシャワーのように降ってくるイメージを勝手に抱いていましたが、日々のルーティーンをこなすのに精一杯で少し受け身だった一年目の自分は、これが大きな間違いだと気づきました。リベラルアーツカレッジは、機会を提供するのではなく、自らチャンスを作ろうとする学生を全力で応援する場所だったからです。実際に、ウクライナ難民への支援の必要性を訴えたところ、ビザの関係上ストックホルムでは就業できない自分に、グリネルが滞在費と食費を支給してくれました。そのおかげでなんとかスウェーデンに残り無給インターンシップを行うことができています。

渡米直前にグルーの同期とアメリカ大使館を訪問した際、外交官の一人にアメリカの学生生活で一番大切なことは何かと尋ねると、”Try everything” だと即答されたのが思い出されます。好奇心センサーの感度を最大して、自分の「面白そうだな」という気持ちに敏感になること。そしてまず飛び込んでみること。沢山の課題や部活動でストレスフルな環境に生きる高校生、大学生にとって、チャンスを作り、掴むために最も大切なマインドセットだと感じています。

リベラルアーツのメリット

グリネルに来て初めての授業を今でも鮮明に覚えています。アメリカの貿易政策についてクラスメイトが活発に発言する中、議論に全くついていけず、口をテープで塞がれているのかと思うほど、一言も出てきませんでした。自分はこの環境で生き残れるのかという不安だけが残り、その日からオフィスアワーに通い詰めました。授業はまるで戦場のようで、授業中何度も変わる議題やクラスメイトの発言の瞬発力に、なんとかついていこうと必死でした。何を聞かれているのかさえわからず焦る時の手汗のにじみ方、発言しても意図をうまく伝えられない時のもどかしさや相手の苦笑い、全く貢献できなかった授業後の悔しさや情けなさ、全てが新しかったのを記憶しています。授業で惨敗した夜は、「クラスの中で誰よりも必死だったか、誰よりも集中していたか」と問いかけ、最後に「いい恥かいたな」と自分を鼓舞していました。しかし、2年生の後半くらいにさしかかると、クラスメイトから反応が返ってきたり、自分の発言を軸にしてクラスの議論が展開していくことが少しづつ増えていきました。先学期の移民研究の授業では、スウェーデンの反移民感情の地域差を投票データに基づき分析し、プレゼンすると、質疑応答では制限時間をオーバーするほど議論が盛り上がり、教授からも博士号を目指すべきだと最高評価をもらいました。資料やデータをもとに自分の意見を構築し、自分の言葉で相手に伝える能力を、グリネルでは徹底的に鍛えられています。メール一本ですぐにミーティングをセッティングしてくれる教授陣のサポートの手厚さもリベラルアーツならではです。自分の実力不足が故に、沢山悔しい思いをしてきましたが、来なければよかったと後悔した瞬間は渡米してから1秒たりともありません。

リベラルアーツのデメリット

 

リベラルアーツの大きな特徴として、文理総合教育があると思いますが、好きな授業だけを取れるわけではありません。特に留学したい場合や、ダブルメジャーしたい場合、一年生のうちからある程度綿密に履修する授業を計画する必要があります。また入学した時点で専攻をある程度決めている学生も多いです。自分はじっくり2年かけて社会学専攻に決め、スウェーデンへの留学も決心していたため、統計学の副専攻は諦めざるを得ませんでした。教員数が少ないため、授業の抽選からもれることもあり、同じテーマの授業が毎学期オファーされるとは限りません。例えば、グリネルでは新しい言語を春学期から始めることはできません。秋学期にオファーされる授業が春学期の必須条件になっているためです。このシステムのせいでドイツ語の履修が遅れ、あと一年早く始めていればと残念に思っています。

 

グルーバンクロフトの強味

グルー基金の一番の強みは、世代を超えた繋がりです。渡米前の壮行会で外交への興味を話すと「もう少し君の話が聞きたい」と60歳以上年上の先輩から声をかけていただき、後日自宅に招かれ一緒に昼食を食べました。「アメリカでは人を見る目を養うことが大切だ」と激励の言葉をもらい、背中を押されました。グルー基金の繋がりの強さを最も実感したのが、コロナ禍での休学期間でした。ドキュメンタリー制作や、大学卒業後の進路などで煮詰まった際、様々な業界のOB,OGにコンタクトし、グルーの奨学生ですと伝えると、どの先輩も快く時間を割いてくれ、丁寧なアドバイスをいただきました。また復学後、完成したドキュメンタリーのフィードバックをもらったりもしました。世代を超えて、奨学生を応援する心強く温かいグルーコミュニティの一員になれたことを、幸せに感じています。自分も先輩から受けた恩を精一杯後輩に返していきたいです。

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