College of Wooster
Independent Minds. Working Together.
About
ウースター大学は、B評定生徒にとってのAスクールと言われています。勉強ができない生徒ばかり集まるの?とネガティブな印象を受けるかもしれませんが、私は「一気に学習レベルが上がり自主性が求められる大学で、留学生のように生活や言語面でまで不安が残る学生へのサポートが充実している」という意味で理解しています。高校でいくら優秀な成績を取っていても、英語に自信がない、親がアメリカ大学の制度に詳しくない、高校までで大学レベルの研究をしたことがない人は(これらは自分のことですが)、たくさんいるでしょう。アメリカの大学で思うようにいかないのは、十分に頭が良くないからではなく、変化に対応するのに必要な知識やスキルの育て方を知らないから。丁寧な授業、充実したサポート制度、フレンドリーな教授と、助け合い精神を持った友人がそろったウースター大学を擬人化したなら、そんなことを言ってくれるような気がします。目次:
1. About Curriculum (どんな学び︖)
ウースター大学では、General Requirement(全体必修)、Major Requirement(専攻必修)、Independent Studies(卒業論文)の三種類の必修授業があります。GRはリベラルアーツ大学の名の通り、人文学、社会科学、自然科学、宗教などさまざまな分野の授業を一定取ることで、幅広い教養を得ることを目的としています。そしてMRは、専攻した分野の知識を十分に得るための授業で、最も少ない哲学では8つ、自然科学では15つなど、分野によって数が異なります。
そして最後のISはウースターの特徴の一つで、アート含めどの学部を専攻しても、大学院レベルの卒業論文を書くことが必須となります。ISはどの分野でもMRに含まれており、一年間かけて教授と一対一で、自分が選んだテーマの論文を執筆します。大学一年時には、全員必修で論文の書き方や引用方法を学ぶ授業を受け、そこで図書館の利用方法等も学びます。論文検索の方法、本の取り寄せかたなどを学ぶ時間も適宜用意されるので、四年間を通して「自分で課題を設定し、すでに存在している研究結果を集め、それをもとに自分なりの答えを出す」というプロセスを学ぶことができます。入学以前は文系の私に研究なんて必要ないと思っていましたが、例えば哲学といってもさらに幅広い副分野があるため、自分が特に興味がある分野に絞って、そこを得意分野とする教授が手とり足とり教えてくれる状態で学べるのは、とても意味のあることだと考えるようになりました。
もちろん自然科学では、一から実験を設計し、結果を分析するプロセスまで学ぶことができます。また、一つひとつの授業に関しては、教授は基本的にフレンドリーで、授業時間外に設定されるオフィスアワーでは、授業のわからなかったところや、授業に関係ない相談にもていねいに乗ってくれます。化学と生物は特に有名で、リサーチ大学には劣りつつも実験施設等が揃っており、大学院進学を視野に入れた教育が行われています。私個人としては自然科学や人文系の授業をとることが多かったのですが、専攻している哲学やコミュニケーション学でもとても優秀な先生方が多いと感じます。
長くリベラルアーツ大学で教師を務めている方が多いので、非常勤講師だとそうもいかない場合がありますが、基本的にオーガナイズされたわかりやすい授業が多いです。また、個人的な用事や生活の悩み事にフレキシブルに対応してくれることが多いのも特徴で、例えば違う授業で論文提出の期間が重なってしまった場合は、教授に相談し一週間提出期限を遅らせてもらう生徒も多いです。
印象的だった授業
一年生の最初の学期にとった人類学入門の授業がいまだに印象に残っています。一番前に座り、授業で必ず一回は発言するようにしていました。教授はとても優しくまた日本で10年ほど研究をされていた方で、オフィスアワーでは英語力が足りず聞き取れなかった部分を丁寧に教えてくださりました。ウースターの教授への信頼は、この授業から揺らいでいません。
2. About Students (学生の雰囲気は?)
キャッチコピーの通り、自分一人で道を切り開く意思と能力を持っていながら、他人を助ける優しさを持った生徒が多いです。全体としては大学が位置するオハイオ州出身の学生が多いですが、多様性を維持するために大学は有色人種や留学生、東西の州出身の生徒を積極的に受け入れています。
留学生に関しては近年(Class of 2021〜2023)まで毎年20%ほどをキープしており、どの授業を受けても留学生がいるといった状態です。そのため、英語が拙いことやアメリカとは異なる文化からきていることを理解し、協力的にグループワークを行ってくれることがほとんどです。しかし、自分から発言しないと話が進んでしまう、相手も違う文化からきた学生にどう対応していいかわからないということもあり、ある程度積極的に議論に参加する姿勢は必須だと思います。
また上級生とペアになり大学生活について相談したり、専攻分野の質問をする制度、同学年のアメリカ人と留学生をペアアップして互いの文化について学ぶ授業など、学生間での助け合いを促す制度が充実しています。生活全体では、他大学同様アスリートやクラブ活動などに精を出している学生もたくさんいますが、勉強が一番大切という共通認識が強いように感じます。
3. Being in the U.S. (留学生への支援は?)
上でも書いたように留学生の割合が多く、大学を支える大切なメンバーとして留学生を支援する体制がある程度整っています。具体的には、入学前にアメリカの文化について学んだり同学年の友達を作る「留学生オリエンテーション」、英語に自信がない留学生のために、1ヶ月間大学の英語チューターが授業でのノートの取り方や会話の仕方について教えてくれる「English Engagement Seminar(EES)」などに参加することができます。
またアメリカで必要なインターンへの応募、確定申告の方法など、必要な事務的手続きの締め切り前には、説明会を開催してくれます。そして一番助かっているのが、ホストファミリー制度。もちろん寮暮らしなので、みなさんがイメージするような家に泊まりっきりになるホストファミリーとは形が違います。具体的には、月一程度で大学が主催するイベントに一緒に参加したり、短期休みやサンクスギビングなどに家に泊まりに行ったり、近くの街にお出かけに行く程度の交流をします。現地の高校事情やアメリカでの行事など、大学内で生活するだけではわからないアメリカでの暮らしを体験することができました。また困ったときに空港まで車で送ってくれたり、夏休みの間荷物を預かってくれたりと、アメリカ人学生が家族にサポートしてもらうようなことを、手伝ってくれます。
4. About Extracurricular (課外活動は?)
私は、日本人クラブの立ち上げを行なったのと、アートクラブに所属していました。やはりスポーツ系のクラブはみんな熱心に練習をしており、バスケやサッカーの試合が定期的に大学で開催されています。新しいクラブを立ち上げる留学生も多く、動物クラブやダンスクラブ、クッキングクラブなどを立ち上げていました。頻度としては週一ミーティング、月一イベント開催程度のものが多いと思います。日本人クラブでは日本にゆかりがあったり、興味がある現地の学生や他の国からの留学生も多く参加しており、親子丼クッキングイベント、日本語学習イベント、旅行体験バザーなどを運営しました。
学期外では、インターンに参加する学生も多いです。キャンパスが田舎にあるため学期中のインターンはなかなか難しいですが、その分3ヶ月間の夏休みでインターンをし経験を積む学生が多いです。大学もそれを推奨しており、無給インターンに参加したい学生を対象に生活費や交通費を20万円程度まで補助する制度があります(多くの人が応募するので勝ち取るのはけっこう激戦)。またインターンの他に、長期休み、そして一学期分留学をする生徒も多いです。アメリカ人学生はもちろん、留学生もアメリカ以外の文化を学ぶべく、ヨーロッパやインド、中国などに留学に行っています。こちらは基本誰でも利用でき、最低GPA保持と軽い選考を通過すれば留学することができます。
5. About Student Life (どんな生活環境︖)
少し行けばとうもろこしが生い茂る結構な田舎です。空港から車で1時間、ウォルマート(総合スーパー)から1時間に1本のシャトルバスで40分程度、近所のダウンタウン(アジア料理屋あり)に徒歩30分程度かかります。治安は比較的良いと思いますが、ちょっと行ったところで銃の発砲事件があったり、大学はリベラルですが州が保守的な人も多く、留学生が道路からものを投げつけられることがあったりします。もちろん、一年に一回あるかなくらいですが。その点は大学も警察と協力して安全な環境を作ろうと最善の努力はしてくれているし、大学に報告すればしかるべき対処をしてくれますが、アメリカに足を踏み入れる以上絶対安全な場所はないかなと思っています。普段生活をする分には、店員さんも優しいですし、特に差別されるといったことはありません。
また大型スーパーなどは遠いものの、徒歩 15 分ほどの場所にド ラッグストアがあり、また大学内に小さなコンビニや文房具
6. Good things about Wooster (プチ自慢)
Independent Minds. Working Together.の標語に全てが詰まっているのですが、「各自で責任を取る分自由にしてね」「大学での活動は基本的にみんなで協力して行おう」のバランスがちょうどいいなと思っています。例えば卒論に関しては、大学院レベルなので哲学だと100Pをゆうに超えます。自然科学では論文は短いものの、欲しい結果が得られずギリギリまで実験を繰り返している先輩もたくさんいます。
興味のあるトピックを選べるとはいえ、これらを完遂するためにタイムマネジメントをし、また実際に手や足を動かすのは自分です。一方で、急に放り出されるわけではなく、四年間をかけて何度もリサーチの方法を学び、また教授とミーティングを重ね、時には同学年の友人と協力し、研究を進めていきます。他の大学でも言えることかもしれませんが、受動的では得られる学びは少なくなる。しかし、指導されるままに一歩踏み出してみれば、想像以上のサポートを教授、大学、友人から得られる。そんな環境です。あとは留学生が多いので、留学生ならではの不安や悩みを打ち明けられる場所がある、大学も真摯に話を聞いてくれるというのも自慢できる部分です。
7. One day in Wooster (自分の一日)
宿題の量が膨大である場合の対処法
宿題の量が膨大になるのはたいてい、本を丸ごと一冊次の週までに読んでこいと言われたときと、ペーパーが何個も重なって課されたときでした。本は、さらっと読みすぎると結局読んでないのと同じくらい頭に残らないので、最初の章をゆっくりと読み、あとは授業で話に出てきた部分を後から読み直すというのが多かったと思います。ペーパーは、とにかくスケジュールを立てて計画的に終わらせます。学期スケジュールで事前に把握し、二週間前から書き進めるとなんとかなります。8:00 起床:着替え、一日に必要な荷物をまとめ部屋を出る
8:30 朝食:部屋から徒歩5分程度の食堂で朝食
9:00 人類学入門の授業(生徒は30人ほど。教授の質問に生徒が教科書をもとに答える形。)
10:00 パブリックスピーキングの授業(スピーチの方法を学び練習する授業。5,7,10分の英語スピーチをパワポなしで行った。)
11:00 昼食:友人と食堂でランチ(ランチの時のみインターナショナルセクションがあき、多国籍料理が食べられる。日本食は生姜焼きや手羽先など)
12:00 一年生セミナー(前述の論文の書き方を学ぶ授業で、一年生が12人程度で構成されている。試験はなく、グループワークが多かった。)
13:00-17:30 予習のリーディング(各授業に上限2時間までと決めていた。このセクションは次回のパブリックスピーキングと一年生セミナーのリーディングをする時間。)
17:30 夕食(いつもは友人とゆっくり食べるが、この日は予定があったので急ぎ目。)
18:00 ハロウィンパーティー(アメリカ人と留学生の文化交流を目的としたクラブ主催のもの。パーティーというよりお茶会。)
19:00 ライティングセンター(トレーニングを受けた生徒やスタッフがエッセイを添削してくれる。文法チェックを提出前に必ずしてもらう。)
20:00 人類学のテスト勉強(三日前あたりから試験勉強をする人も多いですが、私はのんびりやりたい派なので一週間前くらいからコツコツやってます。)
21:00 カルチャーショーのダンス練習(カルチャーショーといういろんな国のダンスや歌を披露する大きなイベントが秋学期にあり、そのためのダンス練習を日本人学生と。)
22:00 次の日の絵画の授業の宿題(身近なものを二週間で10つ模写するという宿題だったので、休憩がてらやっていました)
23:00 就寝
次の日8:00 絵画の授業(7:30ごろ起床し軽いスナックを食べて部屋から直接教室へ)
Figures of Wooster 数字で⾒るウースター大学(参考)
- U.S. News & World Reportによると、“outstanding undergraduate research opportunities and senior capstone programs”のランキングでプリンストン大学と同率1位、”Best Undergraduate Teaching”で全米11位
- 全校 1,996人
- 94%の生徒が、教授が授業に多大な熱量を注いでいると感じると回答
- 71%の授業が、生徒数20人以下。50人を超えるのは0.4%のみ
- 生徒と教授の人数比は、11:1
著者: 石川安夢(いしかわあむ)
The College of Wooster Class of 2021。哲学・コミュニケーション学ダブルメジャー・大学からメリットエイド受給・東京学芸大学附属高校出身
Contact Info: Facebookまたはamuamu.aliceworld(at)gmail.com