Amherst College
おっとりした天才の集う最高の学び舎
About
アマースト大学はマサチューセッツ州アマーストに位置する小さなリベラルアーツカレッジ。ウィリアムズ大学やポモナ大学と並び全米トップのリベラルアーツカレッジの一つとして知られている。卒業生には新島襄、内村鑑三、”Boys be ambitious!”で知られるクラーク博士など、まさに明治日本の知的基盤を築いた人物・アメリカの大統領1名を含む各界の指導的人材がいる。実学的な専攻(医学部や法学部へ将来進学するための専門コースなど)は存在しないが、その分、読むこと・書くこと・対話することを重視した授業で知性の根本を鍛える教育を展開する。SAT・学校の成績・課外活動など全てにおいて厳しい審査をくぐり抜けてきた学生たちと過ごす大学生活は、刺激と成長に満ち溢れている。目次:
1. About Curriculum (どんな学び︖)
アマースト大学はOpen Curriculumというシステムを採用しています(他グリネル大学やウェズリアン大学も同様です)。これはつまり、学生の意思で好きな授業を好きなように組み合わせてカリキュラムを自ら作れるということ。実際、アマーストを卒業するために必要とされている条件はたったの4つ。32以上の授業の履修、最低C-以上の平均成績を維持、初年次セミナーの履修、そして一つ以上の専攻科目の修了です。3つ目に登場した初年次セミナーはアマーストにおける唯一の全学生対象の必須授業で、英語での学術的な読み書きの技術を習得するためにはとても重要。非常に柔軟なカリキュラム制度の下、学生たちは好きなことを好きなだけ学ぶ恵まれた4年間を過ごすことになります。
おすすめの授業と教授
What is Religion Anyway? (RELI-210) with Prof. Andrew Dole
圧倒的な明晰さを備えたドール教授は、教わった学生の中で絶大な人気を持つ宗教学の教授。宗教の定義をテーマに繰り広げられる様々な論説の交錯は、考えること・対話をすることが好きな人全員におススメ!
2. About Students (学生の雰囲気は?)
題名にある通り、おっとりした天才肌が非常に多い印象です。流石に4年生が自分で作曲をしたりコンサートを開いたりするようになると隠し切れなくなりますが、そうでもないと本当にみんなのんびりしていながらすごく優秀なパターンが多いです。全く音楽できるんだぜ感を出さないまま恐ろしいほど楽器を弾ける人が何人もいたり。ある日突然研究プロジェクトを立ち上げている人がいたり。周りのことをほぼ気にせずマイペースにやってて、どこかほっこりしているように見えながらなんかすごいことやってる…みたいな学生が多いので刺激的かつプレッシャーは少ない環境ですね。
また、アマーストの学生のもう一つの特徴として、ある程度までは何がやりたいか定かでない人が多いというものがあります。つまり、将来の夢や専攻分野が定まっている1年生はあまり多くありません。リベラルアーツカレッジであるという理由以外にもう一つ考えられるのが、何か将来について宣言しなければいけないというプレッシャーがほぼないことも挙げられると思います。つまり、学生の間で、専攻が決まっているか、将来の夢を実現するプロセスのうち、今どのくらいのステップにいるのかといったことに基づいて人を評価する視点がほぼ皆無なので、”I have no idea what I want to do in the future, but I am going to figure it out in Amherst.” (将来のことはまだわからないよ、でもアマーストにいるうちにわかるようになるはずさ) って言ってもそうかそうか、そうだよね、というリアクションになるわけです。こういうところもアマーストの学生の魅力かもしれません。
友達に一瞬ビビった瞬間
とある授業で一緒になったアメリカ人の学生が、全くそんなことを感じさせなかったのにも関わらず既に物語を3冊も出版していたことを知って鳥肌が立ったのを覚えています。前々から理知的だなあと思ってましたが、道理で頭がよかったわけだ。3. Being in the U.S. (留学生への支援は?)
アマースト大学の留学生の割合はおよそ10%程度。米国籍を持つ海外と縁の深い学生などもいるので、一概に留学生かどうか判断しづらい側面はあるのですが、どちらにせよ相当数の学生が海外から来ていることになります。特に、日本から留学するなら最初にPre-Orientationという留学生向けの特別なオリエンテーションがあり、そこで留学生同士が仲良くなるので、生活の中での実体的な留学生の存在感はさらに大きくなります(むしろアメリカ人のほうが最初は友達作りに必死かも)。食事も、留学生数人とその中の誰かと親しくなったアメリカ人の集まりで一緒に食べる場合が多いですね。
さらにありがたいことに、留学生をサポートしてくれる体制は色々と大学に揃っています。Pre-Orientationがその最たる例ですが、それ以外にもアマースト大には、Center for International Student Engagement (通称CISE)という留学生専用の事務局があります。CISEの学生アドバイザーが日中はそこのカジュアルな共有スペースを運営してくれたり、それ以外にも大学職員と一対一でアポイントメントなしで話せるDrop-In-Hoursという時間帯があったりと、留学生ならではのビザ・法務関係の相談や事情の分からない初渡米の人へのサポートは全く不足がありません。
特に米国の経験がほぼない人(かく言う筆者もアマーストのPre-Orientation初日がアメリカに初めて足を踏み入れてから3日目という状態でした)は、色々不安があると思います。携帯電話はどうすればいいのか、銀行口座はどうするのか、どんな法的手続きがあるのか…それらの問題のうちの多くは、Pre-Orientation期間中に時間を設けて大学が解決を支援してくれるのであまり心配はいりません。特にアマースト大は、同志社大学との編入協定(詳しくは新島スカラーで検索!)があるので日本人は数少ないながらも必ず3年生や4年生に一人か二人はいるはず。むしろ数が少ない分日本人同士は親しくなれますから、多少の不便や勝手を知らないことによるゴタゴタは、いざとなったら先輩に頼ったりすることで何とか乗り越えられることがほとんどです。
留学生ってなんだ…?
留学生と一口に言っても背景は様々。米国在住歴が長い人から全くの初渡米の人まで色々います。ただ、英語で教育を受けてきた人の割合はかなり高いので最初は英語で圧倒されるかもしれません。大丈夫、気長にいましょう。みんな親切なので友達はできます。4. About Extracurricular (課外活動は?)
学生数が少ないアマーストなので、さすがに課外活動の種類や団体数には限りがあります。例えば、オーケストラは一つしかありませんし、スポーツもNCAAという学生リーグ参戦チームのほかだとそこまで多くはないと思います。ですが、かなりの数の学生が勉強以外に何かをやっているのも事実です。音楽だとオーケストラ、ジャズビッグバンド、ジャズコンボ、アカペラがあり、スポーツも趣味としてのクラブスポーツは盛んです。他にも、公式に登録されていなくとも好きで絵を描いている人がいたり、好きでバスケをしている学生がいたり…
やはり課外活動に関しても、やっぱりアマーストの生徒だなあと思うことはいろいろあります。そもそもステータスのために何かをやるという発想や、なにかができるからということで人を評価する思考がない学生集団なので、好きだったり楽しかったりするからという理由で行われている活動がほとんどだと思います。もちろん、それでもなにかすごいことが起こった時(例えばチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番をコンサートで弾いちゃった学生がいたとき ※実話です)は惜しみなく称賛しますし、リスペクトもします。でもあくまで、やっている張本人は楽しんでいるだけ。肩の力を抜いて勉強の傍ら趣味も充実させたい人は、是非アマーストに来ましょう!
5. About Student Life (どんな生活環境︖)
アマーストは日本人の感覚でいうと間違いなく田舎の、小さな町です。キャンパスから徒歩1分程度でアマースト市の中心部にアクセスでき、そこにはそこそこの数とバラエティのレストラン、書店、日用品店などがあります。
周辺の治安状況は極めて良好で、よほど不注意なことをしなければ夜に一人で歩いてもそこまで問題はありません。むしろ、大学内の一部の寮でのパーティーのほうが危険なくらいです。日本食を食べたくなったら、Kaijuというレストラン(URL: http://kaiju-amherst.com/)で美味しいラーメンが食べられるほか、アジアンマーケットでそこそこ材料、お菓子などは揃えられます。ショッピングモールやゲームセンターなどはバスに乗らないと行けませんが、アマーストの学生のほとんどはエンターテイメントもキャンパス周辺で完結します。課外活動、パーティ、外食などは全然できますし、いい意味で都会的な刺激のない、勉強に集中できる環境です。
6. Good things about Amherst (プチ自慢)
アマースト大学の良さは色々ありますが、ここでは奨学金システム、そしてキャンパスの居心地に触れたいと思います。まず奨学金システムですが、アマーストの奨学金はNeed-Blind、すなわち必要な分だけ合格したならば出してくれる、というシステムであり、かつ毎年奨学金更新があります。つまり、たとえ家庭の事情等が変わったとしても、途中から大学の奨学金を受け取りつつ学業が続けられる。これは非常に安心感がありますね!アマースト大学自体、リベラルアーツカレッジの中では図抜けた財務基盤を有している大学なので、奨学金以外にもいろいろな支援が充実しています。例えば、自分のパソコンが壊れてしまったので、今この文章を僕は大学のパソコンで打っています。日本でアメリカのパソコンを使うのに必要なコンセントアダプターも、大学が購入してくれました。常に学生が本人にはどうしようもない理由(今回でいえば自分のパソコンの故障)で生徒がやりたいことができなくならないように、細心の注意を大学が払ってくれているのがよくわかります。
次にキャンパスの居心地ですが、はっきり言って最高です。最初のページの写真に写っている建物と、右のサイエンスセンターがだいたい学生の生活圏の端と端なのですが、この間なんと徒歩3分程度。ほとんどの施設にほんの少し歩けば到達できるくらいの大きさなので、便利でしかも何人もの友達と歩いているだけで出会います。こじんまりした密なコミュニティを形成するのに最適なキャンパスで、日々の生活はだれしも快適と感じるはず!
7. One day in Amherst (自分の一日)
0:30 前日の就寝時間
7:15 起床
7:45 朝食 (食堂が最も安定して美味しいのが朝)
8:05 統計学に向けて仕上げのリーディング
9:00 統計学 授業
10:00 心理学の授業に向けて仕上げのリーディング
11:45 昼食
12:15 明日の宗教学の授業に向けてリーディング
14:00 心理学 授業 (大人数の授業は最前列中央で受けましょう)
15:30 部屋に戻って若干の休憩
16:00 宗教学のリーディングを死に物狂いで終わらせる
17:15 夕食
17:45 宗教学のディスカッションのテーマをポスト (20:00締切)
18:30 ジャズの練習に向けて個人調整(トロンボーン奏者です)
19:00 ジャズの練習
20:45 勉強(翌日締切の統計学の宿題の最初の見直し、来週に向け歴史の授業のリーディング、ペーパーのテーマの構想など)
23:40 シャワー
0:00 就寝
Figures of Amherst 数字で⾒るアマースト大学(参考)
- 生徒と教授の数の比: 7対1 (特に大学院のないリベラルアーツカレッジにおいては、この数字は学部生を教育する人員と学部生の数の比に当たるので非常に実体感があります)
- 大学院進学率: 80% (アマースト大学の大学院進学への強さは全米でもトップオブトップ。例えばイェール大学の法科大学院へアマーストから進む人の数はイェールの大学学部から進む人の数の倍になることもしばしば)
- 合格率: 13% (アメリカだと小規模で研究の少ないリベラルアーツカレッジは知名度が低いゆえにあまり出願者を惹きつけない場合もあります。それを考慮するといっそうこの数字は異常に低いことがわかりますね)
- 一授業の平均学生数: 19 (他のハイレベルな授業を取るための必須授業ほど人気が高く、学生が多いです。)
著者: 西川真寛(にしかわまさひろ)。東京都の桐朋高等学校を2019年に卒業・Amherst College Class of 2023・グルーバンクロフト基金奨学生・(執筆時点では)統計学専攻予定
Contact Info: mntrbback42195(at)gmail.com