リベラルアーツは一般教養ではない
2021年9月にUniversity of Washington Paul G. Allen School of Computer Science & Engineeringの博士課程に入りました。大学院では Human-Computer Interaction と Information and Communication Technologies for Development の分野で、貧困、ジェンダー差別、健康における社会問題の改善を目指す技術開発・導入を研究しています。このような関心を持ったのはウェルズリー大学でリベラルアーツ教育を通して社会問題を多様的な観点から考える機会があったからです。
リベラルアーツについて
日本では「リベラルアーツ」は「一般教養」と訳されることが多いですが、四年間リベラルアーツカレッジでの経験を経て、リベラルアーツ ≠ 一般教養だと知りました。私が思うリベラルアーツとは自分と他人がともに自由な知的活動に参加することによって、考えることの重要性を知るだけではなく、実感する教育プログラムです。こう思う理由はいくつかありますが、ここでは二つ紹介します。
一つ目は、リベラルアーツ教育の特徴である自由自在な専攻の選び方です。私はウェルズリー大学のリベラルアーツの環境にてサイセンスとアーツの両方を学びたく1年次にコンピューターサイエンス(CS)入門と道徳哲学を履修したことを機に技術と人間の関係性に関心を持ち始め、二分野を共に扱うことで新たな発見や技術の展開を起こせる可能性があると強く感じました。絶対的な答えや考え方に限定せず、クリティカルシンキングを用いて多角的なアプローチをとる哲学と、複雑な論理や計算を簡素化する方法論により、哲学的思考から出たアイディアや実用的な課題を実現性に向けて検証するCSの両輪を使えることを目指してダブルメジャーに取り組みました。
二つ目は、授業外に起こる会話です。ウェルズリー大学の学生はジェンダーや人種に関する社会問題に関心を持つ学生が多く、授業外でもよく社会について語り合う機会が多かったです。それぞれ違うバックグラウンドを持ち、違う分野を専攻している学生とカジュアルな環境で難しい課題について考えることで「こういう考え方もあるんだ!」と気づくモーメントが多かったです。一人一人が自分のパッションや興味について語り合って議論する環境の中であらゆる物事に対する自身のスタンスを明確にすることができました。つまり、より考える力を身につけることができました。日常的な会話を通して思考力が強まり、語ることと聴くことの大切さを知りました。
皆さんもぜひリベラルアーツ教育を経験し、自分にとってリベラルアーツとは何かについて考えてみてください。