Smith College

様々な価値観を受け入れながらお互いを高め合える人材の集う女子大

About

スミス大学はマサチューセッツ州ノーサンプトンに位置するリベラルアーツカレッジ。バーナード大学やウェルズリー大学などと並び、アメリカの名門女子大学セブンシスターズの一つとして知られている。過去 にバーバラ・ブッシュやナンシー・レーガンなどアメリカ大統領夫人 2 人を含む、各界の女性リーダーを輩出している。エンジニアリング専攻の工学学位をアメリカの女子大学で初めて与えたり、最近でSTEM系などの今まで男性色が強かった分野にも学生を多く送り出し、自立した女性の社会進出を後押ししている。優秀で成長意欲に満ち溢れた女性たちとの切磋琢磨、新しい価値観の発見や挑戦が盛りだくさんのキャンパスライフが待っている。

目次:

1. About Curriculum (どんな学び︖)

スミス大学ではOpen Curriculum というシステムのもと、リベラルアーツカッレッジらしいプログラムが提供されています。アマースト大学やブラウン大学でも同様に採用されているこのシステム、実はとても自由度満載のカリキュラムなんです。というのも、卒業するまでに、自分の興味のある分野以外で受けなければいけない必須科目数が他大学に比べて極端に少ない。なんとWriting Intensiveという、アメリカの大学生として必要な学術的な読み書きのスキルを叩き込んでくれる、全学生対象の授業のみ!これさえ無事に履修できればあとは学生の自由です。もちろん、一学期間に履修しなければいけない単位数(特に留学生はビザの保持に関わるので厳しい)や専攻以外の分野をある程度の単位数履修しなければいけないなどの制限はあります。しかしこれらの制限は多様性を尊ぶリベラルアーツカッレッジに通う学生としては受け入れて当然の条件であり、且つ、ある種の指針となります。このように、アメリカの大学生として最低限押さえておかなければならないところだけ提示し、あとは個人の学術的興味、探究心に委ねるという、非常に個人の意志を尊重したカリキュラムのもと、生徒たちは好きなことを好きなだけ(たまにはそれまで興味のなかったことも)学ぶ充実したカレッジライフを送ることになります。

個人的に、このOpen Curriculumはまだ専攻や将来やりたいことなどが思いつかない方におすすめしたいです。生物学・化学系などある程度の予備知識が必要な科目以外は原則Introductory Courseを履修してなくても挑戦できます。ちょっと引っかかっている科目をとって理解を深めるのもよし、全く知らない授業でも教授の評判が良かったら取ってみるのもよし。気の向くままに授業を取っていたら、思いがけずにやりたいことが見つかることも。(かくいう筆者も執筆時点ではまだ専攻が決まっていません。)様々な経験を通して自分自身と向き合う、そんな贅沢な時間を提供してくれることが、スミス大学の学びの特色です。

今までで最高だった授業

Intro To Political Thinking (GOV100) with Prof. Erin Pineda

それまで実践的な政治学に興味があった筆者に政治「哲学」の深みを教えてくれたクラス。一見複雑難解なように思われるプラトンやアリストテレスなどの政治哲学を、学生の創造性を刺激する課題や授業中の白熱した議論を通して、より身近に感じさせてくれる教授の授業は生徒に大人気。 プラトンが提唱する理想国家における三階級の中の一つに属する1人の人間に扮して、彼らの国家やその仕組みについて手紙にまとめるという課題は、個人的にその学期中一番楽しんで取り組めた課題でした。

2. About Students (学生の雰囲気は?)

女子大ということで、基本的に学生のほとんどが生物学上は女性です。(修士プログラムには男子学生もいます。) スミス大学の女性たちは十人十色。政治の動向に関心があり意欲的にデモ活動などに参加する人もいれば、研究室に籠ってひたすら研究に没頭する人もいます。週末に友人たちと近くの大学で開かれるパーティーやバーに行って気分転換をする、いわゆるパーティーピーポーもいれば、自室やキャンパス内の池のほとりで静かに読書をしたり昼寝をしたりする人もいます。学術的興味だけでなくキャンパスライフの過ごし方にも学生一人ひとりの個性が見て取れるのもスミス大学の魅力なのかもしれません。

また、奨学金を受けている学生も多く、女子大だからといって浮世離れしたお嬢様が多いということもありません。キャンパス内では学生のアルバイトの機会が多く、奨学生だけでなく一般生も食堂のキッチンや図書館、大学の事務所などで働いて、学費の足しやお小遣いを稼ぐなど、堅実な生徒が多く見られます。

さらに、特筆すべきなのは、スミス大学はLGBTQ+の生徒を積極的に受け入れている数少ないコミュニティだということです。「生物学上は女性」と先述したのはこのためです。大学内での偏見をなくし理解を深めるために、授業や課外活動の中でいわゆる性的マイノリティの歴史や現状について学んだり議論したりする機会が豊富にあります。また、日常的にもLGBTQ+の生徒に接するため、スミス大学では彼女たち(彼ら、の場合も)に真摯に向き合い理解を深めようと努力する学生が他大学に比べて多いように感じます。

友達の作り方in Smith College

友達の作り方は人それぞれだと思いますが、個人的に役に立ったのは、寮のコミュニティです。スミスではマンションのような学生寮を構える他大学と違って、41ものHouseと呼ばれる家で10〜100人程度のhousematesが共に生活しています。一年生から四年生まで全学年の寮生たちが集うので、学年の垣根を超えた友達づくりが簡単にできます。毎週金曜日の午後4時には共有リビングでスミス伝統のお茶会が開かれ、週末直前で浮き足立っている寮生たちが集まって日々の愚痴を言い合ったり、ゴシップの話題に盛り上がったり、時には授業選択や専攻、教授の評判について上級生に聞いてみたりしています。こういった寮生同士の関係が密でアットホームなコミュニティの中で、焦らずに自分のペースで交友を深めていくことがスミス流の友達づくりだと思います。と呼ばれる家で10〜100人程度のhousematesが共に生活しています。一年生から四年生まで全学年の寮生たちが集うので、学年の垣根を超えた友達づくりが簡単にできます。毎週金曜日の午後4時には共有リビングでスミス伝統のお茶会が開かれ、週末直前で浮き足立っている寮生たちが集まって日々の愚痴を言い合ったり、ゴシップの話題に盛り上がったり、時には授業選択や専攻、教授の評判について上級生に聞いてみたりしています。こういった寮生同士の関係が密でアットホームなコミュニティの中で、焦らずに自分のペースで交友を深めていくことがスミス流の友達づくりだと思います。

3. Being in the U.S. (留学生への支援は?)

Gillet House。学生寮の一階にベジタリアンやグルテンフリーのメニューを扱う食堂がある。健康志向の高い人やアレルギーのある人に人気。スミス大学ではこのようにHouseと呼ばれる寮に食堂が併設されていることが多く、その日のメニューも食堂によって違う。
Gillet House。学生寮の一階にベジタリアンやグルテンフリーのメニューを扱う食堂がある。健康志向の高い人やアレルギーのある人に人気。スミス大学ではこのようにHouseと呼ばれる寮に食堂が併設されていることが多く、その日のメニューも食堂によって違う。

スミス大学の留学生の割合は約13%と、相当数の学生が海外から学びに来ています。多くの留学生は渡米経験が少なく、新しい環境に慣れることには予想以上に不安が伴います。その不安を少しでも和らげるために大学が行なっているのが、International Students Program (通称ISP)。アメリカ在住の国内生よりも一週間程度早めに入寮して、 ビザの扱い方や携帯電話の契約、銀行口座の開設、ソーシャルセキュリティ番号の入手などの法的手続きについて学びます。ISPが終わる頃には必要な手続きがほとんど完了しているので、授業が始まってから複雑な手続きにあたふたと焦ることもありません。その他にも、大学の周りを先輩たちの案内で探検して、勉強の捗るカフェや人気のジェラート屋さん、タピオカ屋さんなどを確認したり、カラオケをしたりと、様々なアクティビティを通して留学生同士の仲を深めます。

SPが終わった後でも大学の留学生に対する手厚い支援は続きます。International Students & Scholars Office(通称ISSO)は留学生に関する事柄のほぼ全てを請け負う、留学生専用の事務所です。心配事があれば、それがどんな内容でもスミスの留学生が真っ先に頼りに行くのがこのISSOです。

相談を受けた上で事務所が判断してより適当に問題を扱ってくれる部署に繋いでくれたりと、留学生にとって必要不可欠なリソースの一つです。また、事務所内の本棚には留学生向けのインターンの資料が国別・地域別でたくさん用意されており、2年生以降の長期休暇の過ごし方についての相談にも快く乗ってくれます。

4. About Extracurricular (課外活動は?)

基本的に、スミスの学生は勉学との釣り合いが取れる範囲以内で好きなことを課外活動にしている印象が強いです。ダンスや歌など自分の得意な分野を生かした活動をしたり、国際政治に関心のある生徒たちで集まって毎年冬にボストンで開催される模擬国連に参加したり、文化交流を目的としたイベントやパネルディスカッションを企画したりと、その内容は多岐に渡ります。活動の期間もばらつきがあり、通年で行われるものもあれば特定の期間のみの活動を行うところも。(かくいう筆者も一年目の冬に行われた留学生団体主導のRhythm Nationという様々な国の踊りを披露するイベントで、何人かの日本人の先輩と1ヶ月かけて練習したヲタ芸を踊りました。これも短期間ですが所謂課外活動です。)

ただ、これだけ課外活動の機会が豊富にあるのにも関わらず、割と他人の活動に関してはスミス生はおしなべて冷静です。参加してる活動の掛け持ち数でマウントを取り合うこともなく、自分は自分、他人は他人と割り切って、好きなこと・興味のあることを自由気ままに楽しんで息抜きをしている人がほとんどだと思います。

5. About Student Life (どんな生活環境︖)

Campus Centerと呼ばれるカフェや自習スペースが完備されている施設の目の前に広がる広場。晴れた日にはカフェで買ったランチを片手に友人たちとピクニックを楽しんだり、教授が課外授業を開いたりする。 Campus Centerと呼ばれるカフェや自習スペースが完備されている施設の目の前に広がる広場。晴れた日にはカフェで買ったランチを片手に友人たちとピクニックを楽しんだり、教授が課外授業を開いたりする。

東京などの大都市に慣れている方にとって、スミス大学のあるノーサンプトンは田舎の小さな町のような印象を受けるでしょう。近隣の大都市だとバスで往復二時間ほどに位置するボストンや三時間ほどで行けるニューヨークなどが挙げられます。日本の感覚だと遠っ!と感じるかもしれませんが、そこはアメリカ、車で二、三時間は意外とご近所さんです。課題の期限が迫っていない比較的暇のある週末には、Peter Panというバスに乗ってボストンに遊びに行ったり、(日本人学生には特に)Boston Career Forum(通称ボスキャリ)での企業説明会に参加しに行ったりする人も多くいます。

治安に関しても、大学の城下町ということもあってか余程深夜不注意に外を出歩かない限りは安心して暮らせる環境です。大学の敷地内から少し歩いたところにはTHORNESというデパートがあり、ちょっとお洒落なインテリアを買いに行くにはもってこいの場所です。また、大学を通るバス(一定の区域までは学生証を持っていれば無料)に乗れば数十分ほどでWalmartなどの百貨店やスーパーマーケットなどが集うショッピングモールに行けて、日用品の買い足しなども便利にできちゃいます。

町にはインドカレー料理店や地中海料理店(Pita Pocketsがおすすめ!)などバラエティに富んだレストランがソコソコの数点在しています。日本食に関しては胸を張ってお勧めできる場所はまだありませんが、近くにアジアンマーケットなどがあるので、自分で作ればそれなりのものは作れます。田舎といっても比較的キャンパス周辺で必要なものが揃うので、都会の喧騒から離れて勉強に集中できる良い環境だと思います。

6. Good things about Smith (プチ自慢)

キャンパスの中心に位置するParadise Pond。その名の通り風光明媚で楽園のよう。ストレスの多い学生に人気の憩いの場。季節によってはボートで遊覧することもできる。
キャンパスの中心に位置するParadise Pond。その名の通り風光明媚で楽園のよう。ストレスの多い学生に人気の憩いの場。季節によってはボートで遊覧することもできる。

スミス大学の良さを語る上で欠かせないのが女性・LGBTQ+の人々の社会的立場向上に対する大学が一体となった積極的な姿勢です。筆者が特に驚いたのは、人文学系のクラスのほとんどで、各授業のテーマに沿う形で女性を含めた性的マイノリティの問題が取り上げられていることです。Political Theoryの授業ではプラトンやアリストテレスの政治哲学書の中で女性がどのように扱われているかということについて熱く教授やクラスメイトたちと議論を交わし、日本のポップカルチャーを分析する授業では女性が日本の文学、映画、アニメの中でどのように描かれてきたかについて研究し、先述したWriting Intensiveの授業では様々な言語の文法が現代のジェンダー問題に及ぼす影響について調べ、論文を書きました。このように、大学が率先してカリキュラムの中に性差別や偏見の問題を取り入れるという姿勢に、筆者は衝撃を受け、同時に感謝しました。

もし他の共学の大学に通っていたらこれらの問題を見過ごしていたかもしれない、当たり前のように受け入れていたかもしれない、と思うと少し怖くなります。今まで見えていなかったものに目を向けさせ、対峙する機会を与えてもらえているだけでも、スミス大学に入学した甲斐があると日々感じています。

もう一つここで自慢したいのは、大学内にあるParadise Pondと呼ばれる大きな池です。辺りには小さな遊歩道があり、晴れの日に散策するといい気分転換にもなります。遊歩道へと伸びる小さな丘の上には大木にかかった手作りの木製ブランコや卒業生から寄贈されたベンチがあり、そこに座りながらひなたぼっこをするもよし、静かに課題図書を読むもよし。池のほとりには小さなボートハウスもあり、暖かい時期には指定の時間内ならばボートを借りて池の上で自然を感じながらくつろぐこともできます。それぞれがそれぞれのやり方でリラックスできる憩いの場所としては最適です。 アメリカの大学生生活は総じて精神的にきついことがほとんどですが、そんな疲れもたちまち癒されるまさに楽園(Paradise)のようなこの池は自然豊かなスミス大学の美しいキャンパスの中でもひときわ人気のスポットです。この景色に見とれて入学を決意したという学生もいるほどです。

7. One day in Smith (自分の一日)

現在大学の図書館は3つある。写真はYoung Library。他の2つの図書館が主に扱う美術系や演劇系の蔵書以外がここに集められている。学生の健康を考えてか、深夜1時には閉館する。2021年の4月ごろに改修中だったNelson Libraryが完成するため、蔵書数や学生用の勉強スペースなども大幅に増える模様。
現在大学の図書館は3つある。写真はYoung Library。他の2つの図書館が主に扱う美術系や演劇系の蔵書以外がここに集められている。学生の健康を考えてか、深夜1時には閉館する。2021年の4月ごろに改修中だったNelson Libraryが完成するため、蔵書数や学生用の勉強スペースなども大幅に増える模様。

0:00 前日の就寝時間
8:30 起床
8:45 朝食(食堂が寮の目の前にあるので多少の寝坊は大丈夫)、同時に前日までに終わらなかった政治学のリーディング
9:25 政治学 授業
10:50 フランス語 授業 (授業と授業の合間に10分休憩があるので余裕を持って移動できる)
12:10 昼食 (人気のメニューはハンバーガーとサツマイモのフライドポテト)
13:00 図書館で翌日の日本のポップカルチャーの授業のリーディング(一番集中できる場所)
16:00 別の図書館で翌々日の政治学のリーディング (場所を変えるのもいい気分転換)
18:00 夕食 (食堂は何個もキャンパス内に点在しているが、やはり寮に近いのがベスト)
19:00 図書館に戻って勉強再開
22:30 シャワーかつ自由時間(1日の終わりに好きなことをするのをご褒美に日々頑張れる)
23:30 就寝

睡眠時間と勉強時間

睡眠時間は短くても七時間、余裕のあるときは八時間取るようにしていますし、大学側もそれを強く推奨しています。(図書館やCampus Centerなどおおよそ学生の勉強場所になるようなところは深夜1時には閉まるところに、大学側の姿勢が現れていたり…) 無理に徹夜をすると次の日の授業に支障をきたすので、適度な睡眠時間の確保には努力を惜しみません。

勉強には掃除・洗濯などの家事や課外活動、食事、シャワー、休憩や友達との交流を含む自由時間、そして睡眠時間以外の全ての時間を費やしています。というか、そうしないと課題や次の日の授業の準備が終わりません。ただし、体が資本なので、体調を崩した日や課題寮に余裕のある週は緩めの勉強スケジュールを立てて、ストレス調整をしています。

Figures of Smith 数字で⾒るスミス大学(参考)

  • 生徒と教授の比: 9対1 (教授との距離の近さはリベラルアーツカレッジの本分。教授が生徒一人一人を認識しているので関係が密になり、気軽に質問に行けたり、相談すれば研究インターン先を紹介してくれることも。教授の家に遊びに行く人もいるみたいです。)

  • 一授業の平均学生数: 20人未満のクラスが70%近く(人気のある講義や基礎分野の講義はどうしても生徒数が20人を平気で越えることはありますが、そういったクラスはごく限られています。事実、筆者が一年間で受けた授業の中で20人を越えるクラスは2つのみ(どちらも基礎クラス、しかも多くて60人程度)、一番小規模なクラスで9人でした。)

  • 合格率:32% (Ivy Leagueの大学に比べると高い気もしますが、だからと言って簡単に合格できるわけではありません。油断は禁物です。)

著者: 山田真理子(やまだまりこ)。Smith College Class of 2023・The American School in Switzerland卒業。政治・データサイエンス二重選考予定

Contact Info: marikoy0425(at)gmail.com

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