考える力

久保田しおん

考える力

久保田しおん

留学先大学:
Mount Holyoke College(マサチューセッツ州) 2019年卒業
専攻:
Physics, Certificate in Logic
大学院:
出身高校:
湘南白百合
職業:
Research Fellow at Harvard University

地球上に存在する多くの生物は、自らの思考について考える、という能力を持たないと言われえています。しかしその中で、私たち人間は自らの考え方について考え、フィードバックができるという非常に恵まれた知能を持っています。 小説 “Infinite Jest”の著者、David Foster Wallaceは、リベラルアーツ教育は物事をどのように考えるかを学ぶことであり、自分の考え方について自覚し、配慮し、自制できることこそが本当の自由なのだと説きました。
 
 
大学生活
大学に入学してからの4年間は飛ぶように去って行きました。しかし1日1日のことを思い出すと、それらは自らの限界まで学び、成長、そして刺激を詰め込んだ毎日でした。
朝8時から夜の9時半まで全て授業で埋まった日。中間試験とオーケストラのコンサートと音楽コンクールが全て重なった週。半分以上も物理学部のラウンジに泊まり込んで勉強した月。平均の2倍以上の授業数をとった学期に、毎週末片道2時間半かけて出張研究をし続けた年。
これらの時間が積み重なってできた大学生活は、高校時代の私にとっては信じられないほど忙しく、時に辛く、そしてあまりにも幸せな4年間となりました。
 
 
卒業後の進路
大学生活の大部分を投資したのが物理学でした。大学入学まで理系科目の授業は必修授業以外とったことがなく、最初の学期に物理の授業をとることにした理由も「昔解いた物理の問題の解法がなんとなく綺麗だったから」というぼんやりとした理由でした。しかし、物理学の「常識がなぜ常識なのか」という問いに一番根本に近い答えをあたえてくれるところ、そして物理学のコンセプトの美しさや優雅さに胸を打たれ大学1年生のうちに素粒子物理学の理論研究を始めるようになりました。大学の過程でCERNやBrookhaven アメリカ国立研究所などで研究をする度に私の物理への思いはさらに強くなり、卒業後は、4年生の時に卒論と同時並行して進めていたハーバード大学でのニュートリノの研究を研究員として引き続き行うことにしました。学生業をせずにただ研究だけに集中するのは学部生時代にはできなかったことなので非常に楽しみです。今の研究に一度区切りがついた頃に物理の大学院に進学したいと思っています。
 
 
リベラルアーツについて
冒頭に述べたリベラルアーツ教育の定義は、一般的に知られている 「幅広い分野を勉強する教育法」とやや似て非なるものです。物理、哲学、コンピューターサイエンスを学んだという点では確かに幅広い分野を学ぶ経験となりました。しかし、リベラルアーツの意義はその幅広い学びの「前後」にあるような気がします。
意思決定に多くのエネルギーを使う脳を持つ人間は、当たり前の選択肢を当たり前に選び、その選択を疑うことなく過ごすことを好む生き物です。楽な選択をしたがる気持ちを自制して自分が主体的に決断しているか意識すること。そしてその決断の結果得た経験から、次に与えられるであろう選択肢について考えるツールを新しく身につけること。この積み重ねで私たちは喜びや希望、生きがいを得ることができるのだと思います。大学で毎日のように行っていた、色々な科目を学んでそれぞれの科目から違う視点を得る、というルーティーンはこれからずっと続いていく意思決定の練習であり、人生におけるリベラルアーツ教育の始まりだったような気がします。
 
これから大学で学ぶ皆さんも、素晴らしいリベラルアーツ教育を始め学びにあふれた4年間を過ごされることを心から願っています。